ブルトレ全盛期はこの時期を心待ちにして、週末ごとに朝練と称して沿線へ出撃していたが、それも今は昔。ブルトレが全廃され、最近では天候を気にせず、心穏やかに週末の朝を迎えることが多くなった。
そんな中、一つだけチャレンジしたい課題として温めていたのが、朝日を浴びて夜明けの東海道本線を上る5032M(サンライズ瀬戸・出雲)を由比のS字で仕留めるというプランだった。
※先輩諸氏の中には24系の瀬戸・出雲を駆逐した憎き電車、という思いを持つ方もいるかもしれないが、個人的には技術革新とマーケティングによって現代の日本に唯一生き残った定期寝台特急としての魅力に撮影の価値を見出している。
いわずと知れた撮影の名所、昔から数々の写真が撮られているが、S字カーブの半径が小さく、長編成を間延びせずに画角に収めるのは難しい。
胸の内に、成功カットのイメージを温め、ついに、今年もこの季節を迎えた。
5032Mの現地通過は定時なら4:56頃となっている。
静岡の日の出は、今年の場合、最速でも4:32であり、定時で来れば、通過まで25分余りしかない。さらに由比から東を望むと水平線の上には伊豆半島が横たわっており、実際に直射日光が差すのは遅くなる。これを踏まえると、5032Mが朝日を浴びてここを通過するのは、日の出が最も早まる5月の下旬から7月上旬の1か月強に限られることが分かった。しかし、6月も半ばに入れば梅雨に入る。梅雨が明けたころには、日の出が4:47(7/20の場合)となっている。5月下旬から6月上旬の期間に、休日と快晴が重なるチャンスは年に数日もない。
(前日の予報通り、快晴を期待させるご来光、日の出時刻の7分後、通過12分前。汗)
そして、さらに難易度を高めるのが、線路より海際に並走する国道1号線の存在だ。
この道路があるおかげで撮影ポイントにアクセスできるわけだが、東名・第二東名が整備されてもなお、主要な物流ルートに変わりはなく、早朝でもひっきりなしにトラックが上下線を行き交う。S字故、画面には並走する道路が入り込み、上り車線に車が並走して来れば、列車にかぶってしまう。下り車線であっても、トラックが通りでもすれば、低い光線が災いしてその陰が列車を覆ってしまう。
さらに、話によれば、歩行者通行不可の道路脇からの撮影故、車の通行に支障をきたすと判断されれば、警察に移動を求められるケースもあると聞く。
古くからお立ち台として名を馳せながら、意図するような作例がすくないのはこうした事情だったのだということは、撮影が終わり、記事をまとめている今調べて分かったことであり、今回の1枚がいかに幸運のもとにもたらされたものかをしみじみ実感した次第。そして東京から往復300㎞、この一枚のためだけに遠征したことが、いかにギャンブルだったのかということも実感している。
前置きばかりで本題にたどりつかないのはいつもの悪癖であるが、快晴予報だけを頼りに現地に突撃し、こうしたあれこれの結果、手中に収めたのが、この一枚である。
2019.5.25 4:55 5032M 285系(I4・I3)東海道本線 興津ー由比
1/640 f5.0 ISO1000 150㎜(APS-C)
この前後には、車道をトラックが行き交っており、奇跡的に撮影の瞬間、国道一号線に静寂が訪れた。その模様(動画)は、ツイッターでご笑覧いただければ幸い。2両目から9両目が全く見えないのが口惜しいといえばそうだが、できる限り編成を大きく写し、かつ編成全体を納めようとするとこの辺りがバランスの限界ではないかとの考えでこの構図に落ち着いた。もう少し前で撮ったらどうなるのだろうかという興味はあるが、遠征したうえで、この難易度を2連続クリアできる自信は全くないため、実現しないかもしれない。
朝日に車体が輝かせ、ゆったりと駿河湾沿いを行くサンライズ瀬戸・出雲。
余韻に浸ることなく、立て続けに高速貨物が通過。この日はいい時間に国鉄色が姿を現すことはなかったものの、素晴らしい日差しを浴びてゆく姿は撮っていて気持ちよかった。
400㎜(APS-C)
5:13 朝練を無事終了し、東京へ帰投。
サンライズエクスプレスが、一日も長く、定期寝台特急として走り続けることを願ってやまない。
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